夏帯に眩い君を見たり
おとぎの百物語
たまゆらに雷火が咲く
マロニエの花がふくらんで
顔のない夜光虫
偽りの白夜
白蓮を撫でた日
朝虹を操るひと
ヘンルーダは無邪気に笑う
英桃ゆすらの森に誘われ
夜に揺らいだクレープ・シャツ
日の目を見ないユッカ
つつましき夜涼
飽き足りない六月
遊山船が雲を呼ぶ
水面に気取る浴衣
色あせゆく冷酒
笑いさざめく九夏
せぐり息とレモン・スカッシュ
泡沫のネメシア
曲がる炎天に紛れて撃つ
レモン水の名残
紫蘭は遥か彼方
蠍座が手を伸ばした先に
虚構のラムネ
傷を持つアカシア
熟れた金魚草