個人的な内容の詩ばかりです。
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No.32, No.29, No.18, No.17, No.165件]

いぬがしんだとき
ありがとうねと母が泣いている
夏の夜だった
いつもよりぐっすり寝ているようにも見えた

からだの流れに沿わない毛並みに触ったとき
すべてが、奇跡だったのだと知った

せんむのおじちゃん
せんむのおじちゃんに会いたい

子どものころ、ばあちゃん家にいくと
ときどきせんむのおじちゃんがいた
なにものなのかは分からない

大きくて、はつらつとした声だった
子どもがほんとうに好きなんだと、子どもの時思った
いっぱい遊んで、いっぱい笑わせてくれた
せんむのおじちゃん

中学に上がる前に
せんむのおじちゃんがしんだらしいときいた
いつ葬式をやっていたのかも分からない
そうなんだ、と思った

大人になって、なぜか時々思い出す

スケート場で急に目の前が真っ暗になって
だーれだ?って声が聞こえて
振り返って、せんむのおじちゃんがいて
うれしさのあまり胸がつっかえてなにも言えなかった

一生懸命生きて死んだあとは
真っ先に、せんむのおじちゃんに会いたい

土曜日
下におりて
おさるのジョージをみていた

ネコがこたつから出てきて
これからの予定をかんがえている

陽光をたっぷり浴びながら
ネコがぱちぱちとまばたきをする

ぱち、ぱち、と
振り返って 薄青の目で

きいろいぼうしのおじさんが
ジョージをさがしている

(2024年11月頃)

えんどうさん
えんどうさんがしんだ
道が くまでが
枯葉にうもれている

えんどうさんは
毎日道の掃除をしていた
道端に くまでやちりとりを
よく置きっぱなしにしていた

暑い日も 寒い日も
今やらなければならないというふうに
道をきれいに
きれいに
していた

せりごはん
下に降りると
ふわっといいにおいがした
ご飯の甘い湯気に
おいしい草が混ざっている

母がせりごはんだよと言う
ばあちゃんがよく作っていたという

今夜はせりごはん
少し離れたところにいるばあちゃん
せりごはんの作り方は
もう知らないかもしれない

網戸の外の紺色から
虫の声がする
(2024年7月頃)